「俺の人生を、一つの言葉で旗にしたい。」
そんなことを本気で考え始めたのは、居酒屋「今なんどき めしどき」が九年目に入った頃だった。釧路の港町で、毎晩のようにカウンターに立ちながら、ビールを注ぎ、串を焼き、お客さんの話を聞き続けていると、自分の中に少しずつ、言葉にならないモヤモヤが溜まっていった。
居酒屋の大将、人材派遣会社の経営者、元アイスホッケー選手、父として、夫として──肩書きはいくつもある。でも、それらを全部まとめて「これが俺だ」と言い切れる一言が、どうしても見つからなかった。
世の中はどんどん変わっていく。広告は効かなくなり、SNSのアルゴリズムに振り回され、情報は溢れすぎている。そんな中で、「自分の名前で勝負する」「自分の生き方そのものをブランドにする」という考え方に、俺は強く惹かれた。
ちょうどその頃、Web5や分散型ID(DID)という概念に出会い、「これからは、誰かに証明されるのを待つんじゃない。自分で名乗り、自分で責任を取る時代になる」と感じた。ならば俺も、自分の旗印を作らなきゃいけない──そう思ったのが、すべての始まりだ。
そして、頭の中でずっとぐるぐる回っていた四つの文字がある。
波。空。律。龍。
この四つを並べたとき、「あ、これが俺の生き方そのものだ」と、身体の奥からストンと落ちる感覚があった。
波空律龍(はくうりつりゅう)という言葉には、それぞれの想いが込められている。
波。 人生はいつも波だ。好調な時もあれば、嵐のように荒れる時もある。運送業をやっていた頃、水産物の仕事が一気になくなり、会社を畳む決断をしたあの夜のことは、今でも忘れない。売上のグラフは、まさに荒れ狂う波だった。でも、波があるからこそ、次の波を読む力がつく。居酒屋を始めたのも、人材派遣業を立ち上げたのも、その波の読み違いと、読み直しの連続だ。
空。 どんなに波が荒れていても、その上にはいつも空がある。釧路の空は、港の匂いと一緒に、いつも少し冷たい。晴れた日も、吹雪の日も、俺は何度も空を見上げてきた。空は「自由」と「余白」の象徴だ。結果が出なくても、現場が大変でも、空だけは誰にも奪われない。「どうせなら、自分で空を選んで飛びたい」──そんな想いを、この一文字に込めた。
律。 ただ自由に波に乗るだけじゃ、人はすぐに壊れる。商売には「律」がいる。リズム、規律、調和。仕入れ、価格、働く人の生活、お客さんの笑顔。全部のバランスを取りながら、毎日店を開ける。それは、俺なりの「律」だ。派遣の現場でも同じだ。人をただ送り込むだけではなく、その人の人生リズムごと預かっている。その責任感を、俺は「律」という字に重ねている。
そして、龍。 龍は、昔から“運”と“上昇”の象徴だ。釧路の港には、世界中から観光客がやってくる。特に台湾からのクルーズ船が着くと、街が一気に賑やかになる。台湾の人たちは、龍のデザインや漢字のTシャツが大好きだ。店のカウンター越しに話していると、龍の話題で盛り上がることも多い。俺自身も、龍のように「地を這いながら、いつか空へ昇るもの」に惹かれてきた。
波・空・律・龍。 この四つを合わせたとき、俺は「これはもう、単なる言葉じゃない。俺自身の生き方の設計図だ」と感じた。だから、この言葉をそのまま俺のブランド名にすることに決めた。
波空律龍をブランド化する、と決めた瞬間から、物語は動き出した。
まず最初に取り掛かったのは、ロゴのイメージだ。
金色の背景に、力強い黒の龍。そして、その横に大きく「波空律龍」の四文字。最初にイメージが浮かんだとき、「ああ、これは台湾の人たちに絶対刺さる」と直感した。龍と金色と漢字。この三つの組み合わせは、縁起の良さとパワーの象徴だ。
実際にAIに頼んでこのロゴを形にしていく中で、細かいことにもこだわった。「律」が二つ入ってしまっているところを直したり、文字のバランスを調整したり、龍の表情を少しだけ凛々しくしてもらったり。画面越しに何度も修正を重ねながら、少しずつ「これだ」という形に近づいていった。
完成した画像をスマホで見た瞬間、思わず声が出た。
「ああ、これが俺の旗だ。」
それは、ただのアイキャッチ画像じゃない。
九年間、港町で鍋を振ってきた時間も、派遣の現場で人の人生に向き合ってきた時間も、アイスホッケーで汗を流していた青春時代も、父として揺れながら生きてきた日々も、全部まとめて一枚の絵に詰め込んだような感覚だった。
この金色の背景は、決して「成功だけ」を意味していない。
むしろ、山あり谷ありの商売人生で、何度も「もうダメかもしれない」と思いながら、それでも火を消さずにやってきた、そのしぶとさの色だ。そこに、波と空と律と龍。この四文字は、俺のこれからの覚悟の証でもある。
ブランド化とは、ロゴを作ることだけじゃない。
本当に大事なのは、「その言葉で、どう生きるか」だと、最近つくづく感じる。
まずは、プロフィールを変える。
XでもInstagramでも、そしてブログでも、俺はこれから自分のことをこう名乗るつもりだ。
貞宗康裕|波空律龍 HAKUURYU
釧路「今なんどき めしどき」大将
龍ブランド「波空律龍」創始者
肩書きに「波空律龍」と入れるだけで、言葉の重みが変わる。自分で自分を「ブランド創始者」と名乗るのは、正直怖さもある。でも、誰かに言われるのを待っていたら、一生その瞬間は来ない。 Web5の世界でも同じで、「信用を誰かに点数で付けてもらう」のではなく、「自分で名乗って、自分で信用を積み上げていく」流れになっていく。
だから俺は、この「波空律龍」という旗を掲げて生きることにした。
釧路に来る台湾の観光客に向けて、波空律龍Tシャツも作りたいと思っている。前は胸に小さくロゴ、後ろには大きく昇龍と四文字。黒地に金のプリント。きっと、クルーズ船で来た人たちは、その Tシャツを見て「これ、カッコいい」と言ってくれるはずだ。
ステッカーや、のれん、名刺のデザインにも、このロゴを使っていく。
居酒屋のカウンターに座ったお客さんが、名刺を手に取り、「波空律龍って何ですか?」と聞いてくれたら、その瞬間から、もう物語は始まっている。
ブランドとは、説明書きではなく、「会話のきっかけ」だ。
「これは俺の生き方の旗なんです。」
「波は人生のアップダウン。空は自由。律はバランス。龍は運と上昇。」
そう語りながら、日本語でも、簡単な英語でも、身振り手振りで伝えていく。それを繰り返すことで、「釧路の港に、波空律龍というブランドを掲げた大将がいる」という認識が、少しずつ広がっていく。
波空律龍をブランド化することは、俺にとって「自分の物語に責任を持つ」という宣言でもある。
これからの時代、ただ店を続けているだけでは生き残れない。値上げの波、物価の波、人手不足の波。いろんな波が一度に押し寄せてくる。そんな中で、自分なりの「軸」がないと、あっという間に流されてしまう。
波空律龍という言葉を掲げることで、俺は自分にこう言い聞かせている。
「波を恐れるな。空を見ろ。
律を整えろ。龍のように、何度でも立ち上がれ。」
このブランドは、派手な成功自慢のために作ったわけじゃない。むしろ、失敗も迷いも含めた「等身大の自分」を、そのまま一つの旗にまとめたものだ。だからこそ、釧路の港から世界に向けて胸を張って掲げられる。
いつか、台湾の人がこう言ってくれたら嬉しい。
「釧路には波空律龍っていう龍ブランドの大将がいるんだよ。」
そんな会話があちこちで生まれる日を想像しながら、今日も俺は、九年目の厨房で鍋を振り続けている。金色のロゴをアイキャッチにして、WordPressにこの記事を投稿すること。それ自体が、俺にとっての小さな第一歩だ。
ここから先の人生、波空律龍という旗を掲げて、どこまで行けるか。
それはまだ、誰にもわからない。でも一つだけ言えるのは、「もう、名乗らずにはいられないところまで来た」ということだ。
釧路の港で、龍は今、静かに動き始めた。
まとめ:波空律龍という旗を掲げて生きていく
波空律龍は、単なる四文字の造語ではなく、俺の生き方そのものを表す旗印だ。
波はアップダウン、空は自由と余白、律はバランスと責任、龍は運と上昇。釧路の港で九年店を続けてきた経験も、会社経営で味わった挫折も、すべてこの四文字に集約されている。
ロゴを作り、プロフィールを変え、Tシャツや名刺にまで波空律龍を刻むことで、俺は「自分の物語に責任を持つ」と決めた。ブランド化とは、格好をつけることではなく、「こう生きる」と自分に宣言する行為だ。
これからは、釧路に来る台湾の人たちにも、世界のどこかでこの言葉に出会った人にも、「この四文字に込めた想い」を少しずつ伝えていきたい。波を恐れず、空を見上げ、律を整え、龍のように何度でも立ち上がる。そんな生き方を、波空律龍という旗の下で続けていく。


